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フジテレビ ありふれた奇跡

2009年1月放映の、第一話、第二話に人形が登場しました。



アサヒグラフ DOLL THEATER

追想する叙情的なしぐさが小牧作品の魅力だ。---(アサヒグラフ)
高さ25cm / 石塑粘土、布貼り、古裂 / 1999年

去年の秋 ---なんとなく、おおらかに 薩摩おごじょの気質がのぞく---
 浪漫派の歌人,与謝野晶子の『みだれ髪』の中の一首 「その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな 」をイメージしながら、作品 「去年の秋 」を見ていたら、作者の小牧多賀子さんから、こんな言葉が返ってきた。
「清少納言の世界が好きで繰り返し読んでいます。そのつど感想が微妙に違って、それが、また楽しいんですよ。『枕草子』にあるようなきれいなものを描写することに、あこがれているのかもしれません」

「去年の秋」はグループ展の主催者に 「正月らしい作品を」とリクエストされ、連作したなかの一作だ。
 小牧さんがつくる着物姿の人形に共通するのは夢見るようなまなざし。かつての銀幕のヒロインのように甘くせつない、レトロな雰囲気を感じさせる。加えて平安女性の生活観をうかがわせたりもする。
「着物姿の人形をつくり始めたのは十五年ほど前から。着物の縫い方も知らなかったので、最初はおくみのない着物を着せたりと、着物には無知でした。勉強になったのは一昨年(1998年)に参加した共同展『京舞妓人形展』での準備のとき。勉強会が京都で二回あり、そこで舞妓さんの髪結いと着付けを学びました。置き屋を訪ねて、かつての舞妓さんの暮しぶりやしつけの厳しさなどもお聞きしたんですよ 」
 きれいなだけの世界ではない。舞妓たちの忍従する姿まで、いじらしいと感じた。すまし顔の舞妓さんをつくる一方で、その表情に解放感を与えてみたくなり、おちゃめな猫たちによる舞妓さんも制作した。
「私がつくる舞妓の女性は、みんなおすましした顔になるの。崩せないの、自分の性格みたいに(笑い)。でも、猫ならなんでもありの、どんなポーズでもつくれる ・・・・・ 」
 福笑いやたなばた、季節の楽しみに興じる猫の舞妓さんは立体漫画のようでもあって、可愛い。今回の正月シリーズでは、もっと過激になり、キセルを吸い、でんぐり返しをし、立てひざで花札をしている猫までいる。花かんざしと優雅な着物で、祝いの宴を繰り広げる白猫たちの無邪気な姿は、思わず笑みを誘う。 「京・舞妓人形展 」のテーマ”舞妓”は、伝統という枠のある世界だった。
「それまでテーマを強制されたことがなかっただけに、テーマという枠があるのもいいかなと思ったんです。そのなかで、ほかの作家のものと同じにならないように、わたしなりに工夫もしました 」

 小牧さんは、人形には持ち主が自由にイメージする余地を残すことがベストだと考えている。つくり始めは、いつも 「なんとなく 」からだ。思いをこめるという作品のつくり方はあえて避けている。それだけに、舞妓という女性の生き方を知った小牧さんが、揺れる自身の気持ちを猫の群作というかたちに昇華させることを学んだ。こうした表現方法、一つの創造世界をつかんだことは貴重な体験だった。

 小牧さんは、ほとんどデッサンをしない。球状の発砲スチロールを芯に、石粉粘土で肉付けし、頭部を形づくる。別々の人形の顔を三体同時につくり、それぞれの表情のバランスを客観視しながら、作業をすすめていく。顔ができると自然にポーズが決まる。そこで、洋装か和装かを決め、衣装に取りかかる。すべてを 「なんとなく」決めていく、おおらかさ。それが小牧流のつくり方だという。話しぶりにも、そのおおらかな薩摩おごじょの気質がのぞく。

取材・船木敬子  撮影・古市智之 アサヒグラフ 2月4日号



ドール フォーラム ジャパン

「美人人形」

絵画には「美人画」という言い方があるが、人形は「美人人形」という言い方は特にない。
あるとすれば、小牧の作る端正、たおやかでおっとりとした人形こそそれに該当するのだろう。
恒例となっている目白の千草画廊での展覧会で、小牧は期待を裏切らない「美人人形」を淡々と発表し続けている。
 少女にしても大人にしても、和服でも洋装でも、古き良き時代に遡る「美人」「美少女」たちは、いずれもうっとりと虚空を見上げたり、机で物思いに耽っている。頬にそえたり傘を持つ手の仕種が、体全体の動きを美しくまとめている。
 このようなモチーフは珍しいものでなく、過去から長く取り組まれていて、例えば伝統工芸展などでもよく見かけるものだ。しかし、木綿の布張り、手染めの布を使った衣装、趣向をこらした美しい髪型といった小牧のスタイルは独自に確立されており、特に作品が醸し出すゆったりとした雰囲気は本人の人柄によるもので、外側だけを見て真似ることができるものではない。
「創作人形」という言葉のもつ意味もまた、小牧には正しくあてはまる。

ドール フォーラム ジャパン編集長 小川千恵子




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